新しい海

Exhibition

《ゴールドレイン》2019年、
金箔と銀箔の粒子

Outline

東京都現代美術館では、現在、国際的評価が高まっている現代アーティスト、EUGENE STUDIO(ユージーン・スタジオ)の国内美術館における初個展を開催いたします。

ユージーン・スタジオは寒川裕人(Eugene Kangawa、1989年アメリカ生まれ)による日本を拠点とするアーティストスタジオで、平成生まれの作家としては東京都現代美術館初となる個展です。

「89+」展(2014年、サーペンタイン・ギャラリー、ロンドン)における作品提供や、個展「THE EUGENE Studio 1/2 Century later」(2017年、資生堂ギャラリー)、「資生堂ギャラリー100周年記念展」(2018-2019年)や「de-sport」展(2020年、金沢21世紀美術館)への参加など、国内外の作品発表において高い評価を得ています。さらに、アメリカを代表する現代SF小説家ケン・リュウとの共同制作、完全な暗闇で能のインスタレーション「漆黒能」(2019年、国立新美術館)、2021年にはアメリカで発表した短編映画がヒューストン国際映画祭、ブルックリン国際映画祭、パンアフリカン映画祭、Amdocs等のアカデミー賞公認国際映画祭を含む10以上の国際映画祭で受賞やオフィシャルセレクションに選出されるなど、自由な発想の幅広い活躍に国際的な注目が集まっています。
本展覧会は、平面作品から大型インスタレーション、映像作品、彫刻作品等で構成され、代表作〈ホワイトペインティング〉シリーズ(2017-)や《善悪の荒野》(2017)から未発表の最新作までを一堂に会し、ユージーン・スタジオの多岐にわたる活動に通底する視点や発想、哲学を紐解くものです。個人的な関心から美術史、過去の事象や文明などの主題を並列に昇華させた作品群は、単なる二次元的なヴィジョンではなく、社会の環境や循環の中で生きる私たちの存在を起ち上がらせます。歴史の転換点ともいうべき現在、批判や皮肉から立脚する表現ではなく、現実を見据えて未来へと漕ぎ出すための叡智を喚起させる作品群をぜひご高覧ください。

Studio view at EUGENE STUDIO
Studio Visit with Artist Eugene Kangawa スタジオ・ビジット、インタビュー動画(約4分)

《群像》〈レインボーペインティング〉より、
2021年、油彩、カンバス、246.0 x 187.0 cm

〈ホワイトペインティング〉より、2017年、カンバス

〈ホワイトペインティング〉より ロサンゼルスでの風景、2017年

平成生まれとして初の大規模個展

これまでユージーン・スタジオは、資生堂ギャラリーの個展「THE EUGENE Studio 1/2 Century later」(2017)や金沢21世紀美術館のグループ展「de-sport」(2020)等で、さまざまな事象を紐解き、私たちの存在が何に拠っているかを再考させる表現で高い評価を得てきました。本展覧会は『2001年宇宙の旅』のエンディングセットを風化させ、物質とテクノロジーの終焉に迫った《善悪の荒野》をイントロダクションとして、高揚や共感のメカニズムに迫った《「あるスポーツ史家の部屋と夢」より#連弾》や、真っ白なカンバスに100人が接吻して“愛”や“信仰”という精神的支柱を出現させた〈ホワイトペインティング〉シリーズ等のこれまでの代表作に加え、発想の深度を探りながら展開させた数々の新作を一堂に会した展示となります。また、多岐にわたる活動は映画制作にもおよび、2021年にユージーン・スタジオが制作した2本の短編映画は、それぞれヒューストン国際映画祭最高賞受賞を始め、ブルックリン国際映画祭、パンアフリカン映画祭、Amdocs等のアカデミー賞公認国際映画祭を含む10以上の国際映画祭での受賞やオフィシャルセレクションへの選出が現在も続いています。本展関連企画としてこの2本の短編映画を特別に鑑賞する機会も会期中に実施する予定です。本展覧会は、国際的に期待が高まる若手現代作家の全貌に、どこよりも早く触れることのできる機会となるでしょう。

《善悪の荒野》(部分)2017年、
陶器、鉄、木、ガラス、灰、他、890.0 x 320.0 x 420.0 cm

《善悪の荒野》(部分)2017年、
陶器、鉄、木、ガラス、灰、他、890.0 x 320.0 x 420.0 cm

“光り輝く金の雨のあと、
瓦礫から大きなレインボーのペインティングが立ち上がる。

太陽とともに作られた鮮やかな翠色の絵画、
19世紀のイコンとWhite Paintingたち、
すべてを光り輝かせる真鍮の巨大な絵画が空間を作る。

広大な海が広がり、
真っ暗闇で作られ誰も永遠に見ることのできない彫像の空間が続くー”

《あるスポーツ史家の部屋と夢より#連弾》2014年、 スチール、木、油彩/木、真鍮、ガラス
installation view at 21st Century Museum of Contemporary Art, Kanazawa

《Our dreams | 夢》(部分)、2021年、 映像インスタレーション

〈私は存在するだけで光と影がある〉より、2021年、紙、染料

奥:〈私にはすべては光り輝いて映る〉より、2021年、真鍮、油彩

《小さな共通項(36人で同時に見上げた空)》(部分)、2021年、アーカイバル・ピグメント・プリント

世界のありように迫る「新しい海」

本展覧会は、さまざまなことが起こり続ける現実の中で、私たちは何を信じることができ、他者と何を共有できる/できないのか等の根源的な問題について、展示室を巡りながら思い起こすように構成されます。

例えば、インスタレーション《善悪の荒野》の瓦礫から立ち昇るように、多彩で繊細な平面作品・新作〈レインボーペインティング〉シリーズが現れます。ある過渡期からその後の新しい時代へ向かう象徴のようでもあり、また虹そのもののように出会った経験が個々と集団の記憶となる作品です。2019年にパリで発表され反響を呼び、本邦初展示となるインスタレーション《ゴールドレイン》では、天から降り注ぐ金の雨に目を凝らすと、綿々と連なる不可逆的な時間に寄り添う生命、その生命の誕生と存在に不可欠な重力など、当たり前のようにある日常とその成り立ちを再考することになるでしょう。

新作〈私は存在するだけで光と影がある〉シリーズは、太陽の下に作品を曝し、陽の光と作品自体の影によって現れたグラデーションの平面作品で、タイトル通り私たちは存在すること自体でポジティヴ/ネガティヴの両側面を持たざるを得ない存在であることを改めて想起させます。

また、本展の特別な体験として、展示室のどこかに、完全な暗闇のなか、見えない状態で生み出された彫像―かたちをとった瞬間から、作った作家当人でさえも誰も永遠に見ることができない彫像の新作《想像》が展示されます。もちろん、この世界には把握できない未知があること、目に見えないものも存在し、私たちと共存していることを示唆し、この世界と社会との関わりについて再考を促します。

ご紹介した作品は全体の一部ですが、本展覧会のユージーン・スタジオの多彩な作品表現により私たちの意識も多面的な刺激を受け、これまでにない気づきへと導かれることになるでしょう。生命誕生の起源が海であるなら、本展覧会が新たな発想の糧となり、これからの世界のありようへと影響を及ぼす私たちの意識は「新しい海」と言えるのではないでしょうか。

〈ホワイトペインティング〉より、2017年、カンバス

Profile of EUGENE STUDIO/EUGENE KANGAWA

https://the-eugene-studio.com

寒川裕人(Eugene Kangawa、1989年アメリカ生まれ)による日本を拠点とするアーティストスタジオ。個展「THE EUGENE Studio 1/2 Century later」(2017年、資生堂ギャラリー)や、完全な暗闇で執り行われる能のインスタレーション「漆黒能」(2019年、国立新美術館、シテ方・大島輝久)を開催。その他、「89+」展(2014年、サーペンタイン・ギャラリー、ロンドン)への作品提供、「資生堂ギャラリー100周年記念展」(2018-2019年)におけるイギリスの建築家集団アッセンブルとの協働、「de-sport」展(2020年、金沢21世紀美術館)への参加、アメリカを代表する現代SF小説家ケン・リュウとの共同制作『ALTER』(2017年)など。現在、短編映画2本(2021年、アメリカ、日本)が、ヒューストン国際映画祭で最高賞受賞、その他ブルックリン国際映画祭、パンアフリカン映画祭、Amdocs等のアカデミー賞公認国際映画祭を含む10以上の国際映画祭で受賞やオフィシャルセレクションへの選出が続いている。

Information

  • 会 期
  • 2021年11月20日(土)-2022年2月23日(水・祝)
  • 休館日
  • 月曜日 (2022年1月10日、2月21日は開館 )、年末年始 (12月28日-1月1日 )、1月11日
  • 会館時間
  • 10:00-18:00(展示室入場は閉館の 30 分前まで)
  • 観覧料
  • 一般 1,300円/大学生・専門学校生・65歳以上 900円/中高生 500円/小学生以下無料
  • 会 場
  • 東京都現代美術館 企画展示室 地下2F
  • 主催等
  • 主催 : 公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館
    協賛 : 株式会社ゴールドウイン、株式会社資生堂
    協力 : キヤノンマーケティングジャパン株式会社、PGI、センティード株式会社、株式会社 MagnaRecta、スタンレー電気株式会社

※開催内容は、都合により変更になる場合がございます。予めご了承ください。